2020/07/26 23:04

マーサ・ロムというイラストレーターがいる。第一次世界大戦前、「ベル・エポック」と呼ばれる時期にフランスで活躍した。

彼女が描いた「シェヘラザード」と題されたポショワール刷りの絵があって、10年くらい前、これをネットで見つけてビビッときてどうしても欲しくなった。
ちょっとエキゾチックな装束で、色彩も素晴らしいと思った。
1枚のプレートとして市場に出ることもあるが、3万円から5万円くらい。買えないし、そもそもいくらオリジナルだといっても複製芸術にそこまでお金を出す気もない。けっこうシビアなのだ。

この絵が掲載された雑誌が、あのガゼット・デュ・ボン・トン誌を刊行したルシアン・ボージェルが編集を手がけた『フイエ・ダール』誌と知る。
eBayで探した。う〜ん、ロムの絵が掲載された号には引っかからない。当たり前だ。超稀少なのだから。
そうこうしているうちに、なんと!!ヤフオクに出た!ウソでしょう!というくらいの衝撃。全ページ揃ってはいないもののマーサ・ロムのプレートは収まっている。。
5000円から。楽勝じゃん!と余裕で入札。おもわず顔がほころぶ笑。
途中経過を見ても対抗入札者ひとり。ほんとにひとり? 終了間際にステルスなヤツがガツッと入れるでしょう、とも思っていた。

ライバルひとりのまま終了日。
その日、実家を解体・新築するということで、ヘトヘトになるまで片付け作業をした。帰りに姉夫婦のクルマの後部座席で、ふっとヤフオクを思い出す。。今夜が終了だ!

クルマの座席の暗闇でiPhoneの画面が、オークションの終了を知らせていた。
まさかの6800円。。僕の入札をひとつ上回っただけ。最初に現れたライバルがそのままかっさらっていった。
なんで2万円!とか入札しておかなかったのだろう。これだから貧乏性はダメだ。
結局、その後、二度とロムの「シェヘラザード」も、雑誌の『フイエ・ダール』も財布に優しい値段で見たことがない。
昨日、書いたとおり。
「人生には一度きりしか出会えない本というのがあって、そう思ったら、何をしてでもそのとき買うこと!」なのだ。