2021/05/14 21:29

古書店を始めて4年くらいか? 他の古書店ってどうやって利益を出しているんだろう? と不思議に思うことが多い。
一方、とてつもなく大きなビジネスにしているところもある。
Amazonを利用することは滅多にないが、先日マーケット・プレイスで「バリュー・ブックス」というところから本を購入した。
本には洒落たリーフレットが挟まれていて、バリュー・ブックスのことを紹介していた。
長野のほうだったかな、400人もスタッフがいるという。1日に1万冊近く「売りようもない本」が入荷してそれを廃棄しない努力もしているという。
古書店の未来の在りようがここにあるのだと思う。
ただ、バリュー・ブックスってAmazonマーケット・プレイスの多く古本で、最安値をつけているんだよね(1円出品とか)。
つまりそれは限りなく安く仕入れているということ。悪いとかそういうことでなく事実。
結果、安く売ることでビジネスを大きくしている。でも、これはどの古書店でもできることではない。体力的にも。
バリュー・ブックスのスタッフのほとんどは仕入れた古書の検品、振り分け、梱包の作業だという。つまり単純労働。
古書店が一冊の本に愛情を込めて紹介して売るのとは、違うシステムだと思う。

僕は一冊の本に自分の愛着も本音も込めて紹介している。
売れなくていいと思って書くこともあるし、素晴らしい本は押し売りに近い絶賛もしたりする。
結果、顧客が減るのか増えるのか、それはわからないけれど、とりあえずいまはデザインの仕事があっての兼業なのでなんとかなっている。
でも、古書店できちんと生活できる利益を出せたらいいなぁ、といつも思っている。
一番のネックは、いまは「検索して最安値のものを探す」という人が多いことだ。
たとえばmondo modernでのたくさんの写真と詳細な解説で内容を知り、アプリの「お気に入り」に入れる。その後、検索するわけだ。
ヤフオクかメルカリかAmazonマーケット・プレイスか、ともかく最安値を探す。まったく本に愛情がない販売者であろうがね。それが資本主義だ(しかも売る人よりもプラットフォームを提供する側が最も儲かる仕組み!)。

結果、その本の紹介に最も労力と愛を注いだ本屋には、利益が落ちなかったりする(労力がかかる分、安値競争には勝てない)。
こう言う人もいるだろう....だって「検索してもっと安いのがみつかるなら、そのほうが合理的じゃない」。
ところがここに陥穽があることに気づいていない。
もし、詳細に丁寧に本を紹介する古書店が存在しなくなったら、そもそもネット上でその本についての詳細を知る機会も失われるのだ。つまり指針となる情報がなくなり、最安値探しにすら行きつかなくなる。
だからちょっとの価格の差には目を瞑って「古書店を育てる」ほうが大切ですよ、と古書店主としては言いたい思いでいっぱいだ。
実際、mondo modernでよく買ってくださる人たちは、僕の紹介文を信じてmondo modernを大切にしてくれているのだと思う。

毎日、本の撮影をしてフォトショで補正して、英語やらフランス語やらドイツ語で書かれた本の「まともな」解説・批評文を書いて、そして利益が1000円程度だったら、だれが古書店なんかやるだろう?
読者の想像力が試されてもいるのだと思う。

尊敬する大好きな古書店がある。神保町の老舗で20代からずっと通っている。
店主やスタッフは古書のカバーを清掃したりビニールをかけたりケアに余念がない。
しかもものすごくいろいろな本に精通していて、こちらがかなりマニアックな質問をしても瞬時に答えが返ってくる。
数ヶ月前にちょっと探したものを憶えていて、次に行ったときにその本の関連本とかを紹介してくれる。しかも価格はつねに良心的だ。
良心的、というのは安値競争には勝てないけれど、Amazonマーケット・プレイスの「投機相場」のような下劣なこともしないということ。
mondo modernもそんなふうであれたらいいなぁと思う。
少しでも見倣おうとロールのビニールを買って、ヒマさえあればダストカバーにビニールカバーを付けている。
それがあるだけでダストカバーに傷もつかないし、本を手にしたときに気持ちがいい。
本の価値は、相場の価値ではないと思う。そしてどんな本もできるだけ良い状態で長生きさせてあげられればとも思う。
古書店とはそういう場なのだとも。

※写真は現存するFullers Bookshopの前身の書店の内部。1900年頃。https://www.abc.net.au/news/2020-02-16/interior-of-fullers-bookshop,-around-1900-1/11969838?nw=0