2022/10/08 19:27

昨年9月にジャン=ポール・ベルモンドが亡くなったとき、このBlogにこう書いた。
「有名人の誰が死んでもあまり感慨を抱くことのない僕だが、ちょっと動揺した」。
そうなのだ、著名人の死に冷淡だったのにベルモンドの死には動揺したのだ。
そしてゴダールが亡くなった。かなり動揺し、それは数日間続いた。
なぜだろう? 

そんな折り『リオの男』(64)が放映された。フィリップ・ド・ブロカ監督、ジャン=ポール・ベルモンド主演。
「ゴダールが死んだら映画史の半分が消える」と言ってきた僕だが、一番好きな監督はゴダールではなくフィリップ・ド・ブロカだ。
その詳細は別の機会に書くとして『リオの男』だが、すでに5~6回は観たこの映画を久々に観てずっと考えていたのは、こんな不死身そうなベルモンドでも死んでしまうのか?ということだった。

ブロカ+ベルモンド作品は、メチャクチャなアクションばかりで昔は笑って観ていたが、いま観返すとこんな映画に出てベルモンドがよく無事だったとそればかり思った。


ついでにもっと好きな『カトマンズの男』(65)も観直した。これはもう10数回は観ている。
昔からウツ気味だった僕はウツになると『カトマンズの男』を観た。
30代後半のとき恋愛したマキちゃんというコがいた。10歳ほど年下でとても美しかった。
僕の事務所で深夜ふたりで『カトマンズの男』をビデオで観たことがある。
ベルモンドくらいタフだった彼女は大笑いして「馬鹿馬鹿しい」と言っていた。
そのマキちゃんも癌の転移で50歳で亡くなってしまった。それを知ったとき号泣したよ。。

いまさらながらに...人は死ぬ、ということを実感する。
そして『リオの男』でのベルモンドの相手役フランソワーズ・ドルレアック。
彼女が出たロマン・ポランスキーの『袋小路』(66)を数日前に観たばかりだった。ドルレアックも25歳で亡くなった。
自分で運転していた車が路面の濡れた高速道路でスリップし、標識に激突して車が炎上しての死だった。
そのことは20代の頃に知って、それ以来ドルレアックが出る映画を観るのは辛かった。
『柔らかい肌』(64)なんて大傑作だったが、ドルレアックは美しすぎた。

『リオの男』でドルレアックがブラジルの民衆と街頭で踊るシーンがある。ダンスもうまく素晴らしく良い。
「こんなドルレアックが死んでしまうの?」と何度も何度も思った。でも、しょうがない。

ところで今回書こうと思ったのは、『リオの男』から『カトマンズの男』へのフィリップ・ド・ブロカの変化のことだった。
でも、もうここまでで文章が長くなってしまったので別の機会に。
こうしていつ来るか判らない「別の機会」ばかりが増えていく。
少しだけ書くと『リオの男』でのドルレアックのワンピースがとても洒落ていたということ。
両脇に黒のラインが入っただけのワンピだがモダーンでクール。あぁ、このラインだけでこんなに違うよね、と感嘆した。
ド・ブロカ作品は破天荒なものが多く、情報量が多すぎて何度観ても発見がある。昔はベルモンドやアクションばかり観ていたが、今回はドルレアックばかり観ていた。
誰にも人生最高の時期はあるよね、と思いながら...