2022/10/30 19:05

パリのドフィーヌ通りにある「Librairie Couleur du Temps」という古書店は有名なのだろうか?
もう完全に記憶から消えているが、1977年8月9日、21歳のときここを訪れてドロテア・タニングの画集を買った。

タニングはシュルレアリスム系の女性アーティストで、僕が最も好きな画家はリー・クラズナー、ドロテア・タニング、ウニカ・チュルンと女性アーティストばかりなのだ。

その画集は一昨年か、mondo modernで販売し、友人のアーティストMさんの手元に行った。
とても思い出深い画集だったけれど、いつか別れがある。


1ヶ月ほど前、ある写真集をパリの古書店に注文した。
届いた本にはウィリー・ロニの古い写真の葉書が挟まれて、古書店のコメントが手書きされていた。
いまどきこんな粋な古書店があるのか、と思った。


スタンプで押された「Couleur du Temps」の文字にどこか図像的記憶があった。
もちろん1977年に行ったときの記憶はとっくに消えている。
でも、どこかこの字面にひっかかるところがあった。

そして数日前、iPhoneの写真を整理していたとき、ある写真が出てきた。
売ってしまったドロテア・タニングの画集の見返しに僕が購入時に日付と場所をメモしたもの。

1977. 8. 9 Couleur du Temps Librairie
24 Rue Douphine Paris

画集が売れたときに撮影したものだが、撮ったことすら忘れていた。
でも、そのとき急に記憶の回路がつながって、あの葉書のスタンプの書店と、このメモに書かれている書店は同じではないか?と思った。 


ファイル・ブックにしまった葉書を取り出して見た...同じだった。
1977年に縁があった書店が...まったく記憶の欠片もなくなっていた書店が、2022年にもう一度つながった。
古書店業をやってなかったら、こんなこともなかったもしれない。

ちなみに出征する兵士の写真のカードをこの古書店が挟んだのは、ウクライナ戦争に対する意思表示なのだと感じた。
こういう古書店であれたらいいな、と思う。