2024/02/28 03:25

外付けのハードディスクドライブがやたらと増えて,整理しなければと思い見ていたら、
10年くらい前にYoutubeからやたらとDLした古い映画のフォルダが出てきた。
そのなかにブリギッテ・ヘルム主演『妖花アラウネ』(27)が。
かなり画質が悪いので新たにYutubeで探すともう少しマシなのがアップされていた。


白眉はここからの1分ほどのシーン。
ブリギッテ・ヘルム=主人公アラウネが男をみつめ、そこから背を向ける間、肩越しでまで憎しみを表す目が凄い。
この男はアラウネの父と称している科学者でブリンケン博士。
彼は絞首刑囚の精液(から生まれたマンドラゴラ)を売春婦に人工授精させた。
ヘルム=アラウネはこうして生まれた。



....粗暴かつ妖艶に育ったアラウネ。
ある日、彼女は父(だと思いこんでいた博士)の日記を盗み読みして自分の呪われた出自を知る。
博士を殺そうとして殺せなかったのがこのシーン。

ただし、アラウネは死以上の苦しみを博士に与えると誓う。
扼殺しようとする手の影は、いかにも表現主義映画だ。


『メトロポリス』(26)で有名なブリギッテ・ヘルムだが、他にも良い主演作がたくさんあり、
昔観た何本かを検索するとまだYoutubeにはあるようだ。

アラウネでのメイクは極端に唇を薄くしていると思う。
酷薄な性格を表すため、そしてワイマール・ベルリンの最も現代的な流行風俗でもあったのだろう。
そういう風俗的な面でもこの映画は面白い。
メイドの黒のワンピースも20年代風にローウェストなのだ。


原作は幻想小説として名高いハンス・ハインツ・エーヴェルス。
監督はヘンリク・ガレーン。
ドッペルゲンガー的な生をテーマにした『プラーグの大学生』(13)も
エーヴェルス原作、ガレーン監督の秀作だ。

ところで、橘外男の小説『妖花イレーネ』は、『妖花アラウネ』のタイトルに影響受けたものではないかなぁ。