2024/03/23 21:22

1920年代から『Vogue』で活躍した写真家ジョージ・ホイニンゲン・ヒューン。
その作品展がCHCHANEL NEXUS HALLで開催されている。入場無料。

写真集などでほぼ見ていた作品だが、大判のプリントで観るのは趣が違う。
しかもここはいつも会場構成が見事だ。
限られた空間をいかに錯綜させるか、考えられている。
観客は(ベンヤミンが書いたように)森を彷徨うように展覧会場を彷徨う...
ヒューンの初期は典型的なスタジオ作家だ。
ビーチの水着写真もじつはスタジオで撮影した。
プールサイドにいるかのようなスイムウェアの男女ふたりの写真も『Vogue』発行元、コンデ・ナスト社の屋上で撮ったもの。
左の男性は写真家ホルスト・P・ホルスト(ヒューンの恋人)、右は僕の大好きなリー・ミラーだ。
ヒューンが撮ったリーの写真は多い。しかも背中やうなじが...
マン・レイも(当時の愛人)リーのうなじを撮った。
そのネガは捨てられたが、リーが拾った。のちにそのネガは大きな問題を起こす。
リー・ミラーはモデル業に飽き足らず写真家となるが、彼女のファッション・フォトをまとめた本『Lee Miller in Fashion』のカバーに使われたのが水晶玉をいじるリーの写真。
リーの写真集の表紙は、フォトジェニックなリーを撮ったヒューンの作品だったのだ。

水晶の中に閉じ込められたのは、ドイツ人モデルのアグネタ・フィッシャー。
アグネタもヒューンのお気に入りのモデルだった。
双眼鏡を持つ女性もアグネタ。
スタジオでの照明に凝り、モデルの造形美とは別に照明の美も写真の大きな要素にした。
ヒューンの写真は20年代後半の構成的なモダニズムから、30年代は古典主義美学へと変化していく。
それは30年代全体の動向だ。

30年代のファッション・フォトを担ったのがヒューンとホルストだった。
もちろん先達たるスタイケン、そしてふたりに続くセシル・ビートンなどもいるが。
以前、ヒューンとホルストがドライヴしてセシル・ビートンの家に遊びに行った話を読んだ。
なんという光景だろう!
神話だ...

https://nexushall.chanel.com/program/2024/ghh/