2024/05/06 01:50

ブリギッテ・ヘルムは「尋常ならざぬ何か」を演じたら一級だ。
G.W.パブスト監督の1928年の作品『Abwege』(邦題:邪道)での演技。


大都会の光の明滅の中、ナイトクラブからタクシーで帰宅するときの車中のシーン。
パブストはこの作品で極端に字幕を少なくしたので、何を叫んでいるのかは不明だが
彼女が帰宅を急いでいる緊迫感は強く伝わる。
じつは自分が享楽的に浮かれている最中に夫が自殺したのでは?と疑念を持ったのだ。


金持ちの弁護士の妻、ブリギッテ・ヘルムは遊び仲間のひとりである画家に言い寄られる。
その誘いに乗っていくヘルム。妻を監視し始める夫。

1時間35分の映画だが、25分近くがナイトクラブでのシーンで異様に長い。
ベルリンの〝ナハトレーベン(夜の生活)〟だ。


クラブにいる女性のほとんどがボブカット。当世流行のフラッパーなのだ。
短髪にした〝男装の女性〟がカウンターで中年男と飲んでいる。
奥の部屋では当時〝シュネー(雪)〟と呼ばれたコカインが取り引きされている。
ヘルムも奥の部屋に導かれて吸引したようだ。

短髪に男装の女性(右)に酒を奢る中年男性

クラブでのコカイン(シュネー)の取り引き現場

ところでヘルムの衣裳、2ヶ月ほど前にモデルのエミリー・ラタコウスキーの着た
「重力を無視したドレス」とやらがニュースで話題になったが、ヘルムの衣裳も肩紐もなく不思議だ。
よく見ると透明のビニール素材か薄衣のようなもので止めている。
衣裳デザインはブリギッテ・ヘルムとクレジットしたサイトがあるが本当だろうか?


画家との不倫は夫によって邪魔されるが、ふたりは離婚裁判所で離婚することに。
ところが最後の最後にふたりに愛が戻りかける。

夫役のグスタフ・ディースルの顔の造型はいかにもワイマール・ベルリン風。
ヘルムの横顔は、ナチ時代の御用彫刻家アルノ・ブレーカーの作品にも似ている。

www.youtube.com/watch?v=vOnVYSzt-A4