2025/01/11 04:26

他人が見た夢の話ほど、退屈なものはないからどうぞスルーしてください。
これは自分の記録=記憶、そして文体のためのもの。


この画像は筆者の脳のMRI画像とジャン・コクトー演出の「アンティゴネー」の主演女優をコラージュしたもの。

...いつも朝方寝るのだが、まったく眠気が来ずに昼近くになり、睡眠導入剤だの何だのを飲み過ぎて気持ち悪くなった翌日のこと。
それならと朝の8時まで起きていて睡眠薬を飲んだ。
まったく効かないときもあるし、この日も効果なさそうな感じだった。

どうにも眠れず目覚めている感覚だったが、ベッドの横に何か塊というか、存在が感じられる。
触ってみようとするのだが、手が動かない。いや身体の向きも変えられない。
かなりの恐怖に陥った。

右側に得体のしれないモノが存在しているのだが、左側はベッドの縁だ。
そっちに逃れようと身体の向きを左にしようとするが、やはり動かない。
床は見えているのだから、そちらに手をつくか、転げ落ちるようにしようとするのだが、どうしても身体が動かないのだ。

これが「金縛り」というものか? とも思ったが、そもそも金縛りというのを経験したことがないし、はっきり言ってどんなことを言うのかもわかっていない。
...そんなことを冷静に考えているのだ。

だから「なんで自分は目覚めているのに、こんな夢を見ているような状況にあるのだろう?」と、とても不思議で怖かった。
もしかしたら「目が覚めていないのかも?」という疑念が生じて目覚めようとするが、目覚めている状態から目覚めようとする不条理に陥る。
だから目覚めているという自覚のほうが強い。

そうこうしているうちに隣の物体がふいに起き上がった。
若い頃に付き合った女性だった。しかも裸だ。
さらに身体から顔まで全身の表面がぬるぬるとテカっている。
それもエロティックなぬめりではなく、なにか金属的でありながら、溶けるような感じでとても不気味だった。

彼女は一言も発せずにベッドを降りる。
身体が動かないので目で追うだけだが、なぜか視覚だけはどの方向も自由に見えている。
彼女は暗闇のなかに消えた。

僕はその姿を追って床を見るのだが、床はいくつもの石が突起した異様なものとなっていた。
その細部が詳細だ。
石の肌理まで細かくわかるのだが、まったく見たことがないもので、その造形もイヴ・タンギーの海底の絵のような異様さだった。
しかも、僕の視線は海上を飛行機で飛んでいるかのようにその突起物の上方を滑っていく。

こんな現実があるのか? こんなのは夢でしかない。
...そう考えているのだ。
そのあとがまだいろいろあったのだが、忘れてしまった。

そう、忘れたというのは、これが夢だったからだ。
あんなに覚醒していて、眠っているわけでも夢見ているわけでもない、と冷静に判断しつつ、それさえも夢だったのだ。
そのこと自体がとても怖かった。

その翌日、もう少し早い時間に睡眠薬を飲んだ。今度は...

...ジェラール・ド・ネルヴァルは「夢は第二の人生だ」と何度も書いている。
それはロマン派的な「夢への憧憬」だったのか? 
それとも夢想に呑み込まれていく現実への恐怖だったのか?