2025/02/27 02:12

グレタ・ガルボ出演作には、いくつもの未ソフト化のものがある。
日本でソフト化されていないものはアメリカから購入した。
アメリカでもソフト化されていないものが南米でソフト化されていたりして、それも買った。
DVDになっていないものでVHSヴィデオがあれば、それまでも。。
まだ、YoutubeでFull Movieなど観れない時代に。
いま、そのどれをも観直して、こちらとallcinemaのサイトにレビューを書いていこうと思っている。


The Mysterious Lady(女の秘密)1928年
古き佳きウィーン。
友人と劇場を訪れた将校カール・フォン・レイデン(コンラッド・ネーゲル)は、窓口で満席だといわれる。
ところが、あとで一つだけ空いたといわれ、彼だけ桟敷席に入ると、そこにはタニア・フェドロヴァ(ガルボ)が先客としていた。
レイデンを気にも留めないタニア...となると美しきタニアがさらに気になっていくレイデン。


ガルボの目での演技のうまさはよく言われることだが、この映画ではむしろ恋する男、レイデン=コンラッド・ネーゲルの目や表情のほうが浮き立つ。
全編、恋するあまりの切なさの表情で溢れているといった感じだ。
やはりガルボと共演した翌年製作の『The Kiss』では、存在の薄かったネーゲルだが(これはジャック・フェデーの演出の失敗だろう)、本作は彼のためのような映画だ。


レイデンはタニアと知り合ったあとに、諜報部にいる叔父から「タニアはロシアのスパイだ」と知らされ、対ロシアのための重大な任務を任される。
ベルリンに機密書類を運ばなければいけない。ところが同じ汽車にタニアが同乗していた。
レイデンのコンパートメントに来たタニアだが、レイデンは「きみはスパイだ、愛は偽りだ」と非難する。
タニアは「劇場での出会いは仕組んだものだが、あなたに恋してしまったことは計画外だった」と訴えるが、耳を貸さないレイデン。
受け入れられないと悟ったガルボの怒りを含んだきつい表情。本作で最もガルボが美しいのは、このシーンだったと思う。


結局、ガルボはレイデンの機密書類を盗み、ロシア諜報部の元に。
ミスを犯したレイデンは軍法会議で処罰され刑務所に入るが、叔父の計らいでピアニストとしてロシアに潜入。
タニアを愛人として囲いたいロシア諜報部の上官ボリスのパーティに楽士として入り込む。
ここからタニアとレイデン、ボリスの三つ巴の愛と闘いが...
終幕までハラハラさせつつ愛に盛り上がり、しかもレイデンのピアノに合わせてタニアが歌う美しいシーンなども織り込まれて、じつに良い。


ただ、ガルボは『肉体と悪魔』から2年後なのにちょっと老けてみえる。
そのあとにつくられた『恋多き女』や『野生の蘭』や『船出の朝』のほうが美しい。どうしてだろう?
監督のフレッド・ニブロは本作の2年前『明眸罪あり』で、完璧なまでにガルボを美しく撮ったというのに。

...室内シーンが多く、さほど予算がかかってない作品だが、物語や展開は全編、緩むところのない佳作。


ラストのロシアからウィーンへの汽車のなかで肩を寄せ合う二人...雪吹雪の中の検問所での二人...
係員に「貴方の妻か?」と問われ、「そうだ」と答えるレイデン。
短いカットで繋がれるシーンだが、これ以上のロマンティシズムもあるまいといった美しさだ。