2025/08/07 08:40
「今回は数週間で終わる」?
プーチンもそんなつもりで始めたのだろう。戦争で勝てると思う人間はみなそう考える。
死者に対して責任を持たないから。。
あとで祀れば済むと思っているから。。

『失われた楽園』(1940)は、『鉄路の白薔薇』(22)という大傑作を残したアベル・ガンスの作品。
ミシュリーヌ・プレール、フェルナン・グラヴェ主演。
第一次世界大戦前のパリのクチュール界が舞台なので、ファッション史的にも面白い。
売り子兼マヌカン役のミシュリーヌ・プレールはこのとき17歳。輝くばかりに美しい。
1913年の巴里祭でフェルナンと知り合い結婚。

「今回は数週間で終わる」
村人が訊ねる「本当か?」
「新聞にそう書いてあった」。
第一次世界大戦のとき、フランスでもドイツでも新聞は数週間で終わると書いた。
結局4年間で1600万人が戦死した。

夫フェルナンの出征中にミシュリーヌは、動員された軍需工場での過労が祟って娘を生むが産褥死してしまう。
あまりに早い死に、映画はミシュリーヌを生まれた娘として復活させる(二役)。
ところでこの映画、第一次世界大戦前、ちょうどコルセットが消滅する時期を描いていて、そんな話題が随所に。
映画で揶揄されているパリ・モード界の大御所は、どう見てもポール・ポワレのこと。
...僕はポワレが最高に好きだけれどね。
晩年、破産して無一文になってしまったという波乱に富んだ人生が。

ミシュリーヌ・プレールは、ジャン・ドラノワ監督の大傑作『賭はなされた』(47)や、
ラディゲ原作の『肉体の悪魔』(47)が美しかったけれど、
『まぼろしの市街戦』(67)のときはすでに45歳だったことに驚く。
監督のアベル・ガンスは第二次世界大戦中にこの映画を作って、
ロマンス映画のなかに第一次世界大戦の悲劇を挿入した。
筋が通った人間というのは、つねにこういうものだ、と感心させられる。