2025/08/28 22:09

ファッションの写真集、あるいは作品集というのはどれも似たり寄ったりと思っている人も多いかもしれない。
たしかにそのとおりだが、ときどき「似たような感じだが何かが違う」という本に出会ったりする。


ディオールのデザイン・アーカイヴから帽子のデザインに焦点を当ててセレクトした本書もそんな一冊。
巻頭の写真、その次にくる写真...とすべてが選び抜かれている。
いろいろなカメラマンの写真だから一人の作家の個性というわけではない。
でも、そんないろいろな作品を一本の筋の通った美意識でまとめたのが帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズだ。


ジョーンズは1970年代末のロンドンの「ニューロマンティック」ムーヴメントとともに登場した。
当時は本人がその出立ちからして完全にニューロマ派。
かなり尖ってはいたが、その才能は次第に世界で注目されるようになる。

同じくロンドンでエッジの効いたデザインをしていたジョン・ガリアーノがパリに進出、
1996年にディオールのデザイナーに就任する。
ガリアーノがショーでの帽子のデザインを依頼したのが、スティーブン・ジョーンズだった。
こうしてジョーンズは世界的な帽子デザイナーに。


ガリアーノ以降のディオールのデザイナーたちもジョーンズに帽子のデザインを依頼していった。
ラフ・シモンズも!ガリアーノとは真逆な感じもしますが。。
現在、スティーブン・ジョーンズは自身のブランドを持っている。


長い前置きのようになったが、そのジョーンズが本書のアートディレクションを手がけた。
もちろん具体的なデザイン、レイアウト等はグラフィック・デザイナーがやっているのだが、
写真のセレクトやその順番にはジョーンズの意見も反映されたことだろう。
全ページに美意識が満ち満ちているのだ。

美意識の中で溺れそう...そんな本がこの『DIOR HATS』である。