2024/05/24 00:23

1960年代の最もエッジーな一着を選ぶとすればこれ。
1966年のイエーガーのPVCコートとドレス。

ちょうどレインコートにトランスペアレンスのPVCが使われ始めた時期で〝透明〟というのは、とてもクールでフューチャリスティックに感じられたのだ。


バースのファッション・ミューアムが設けた賞〝ドレス・オブ・ザ・イヤー〟を受賞したが、ノーマン・イールズ撮影の写真に拠るところも大きかっただろう。
mondomodern.thebase.in/items/84532250

だが、1960年代は一様にモダニズム一辺倒だったわけではない。
前半はまだクラシシズムが残り、そこにシンプルさを注入しようとしていた。

1965年前後にモダニズム、フューチャリズム美学が席巻するようになるが、その手前の1964年にはエレガントでゴージャスなこんな毛皮のコートも。


撮影はデヴィッド・ベイリー、テレンス・ドノバンを育てたジョン・フレンチ。
クラシックなテイストとモダニズムを繋いだフォトグラファーだ。

ところでこの毛皮を着たモデルは『007 ゴールドフィンガー』でジェームズ・ボンドとスイスの山道でカーチェイスも繰り広げたティリー・マスターソン役のタニア・マレット(個人的には歴代ボンドガールではダニエラ・ビアンキの次に好きだ)。


清楚な美しさが際立っていたが、映画はギャラがあまりに安かったためにモデル業に戻ってしまった。
彼女が言うには映画で一週間、拘束されてのギャラは、モデルでの一日分程度だったそうだ。
ちなみに女優のヘレン・ミレンはマレットの従妹。

 2019年、77歳で亡くなった。